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花コリ2020大阪会場飛び入りトーク録『魔王の娘、イリシャ』チャン・ヒョンユン監督

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花コリ大阪会場では、4月と10月に開催しました。新型コロナウイルス感染症拡大の影響で、韓国からの入国規制により当初予定していた韓国ゲストが来日できなくなり、4月の上映会では、韓国インディペンデント・アニメーション協会(以下KIAFA)の事務局とスカイプでつないで、予定していたゲストイベントを実施いたしました。
4月5日の日、ちょうど(?)『魔王の娘、イリシャ』の監督でもありKIAFA会長のチャン・ヒョンユン氏が事務局にいたため、急きょ、韓国長編プログラム上映終了後、簡単な質疑応答が行われました。

2020年4月5日(日)韓国長編プログラム『魔王の娘、イリシャ』上映終了後

飛び入りゲスト:チャン・ヒョンユン監督
司会:小川泉(CO2運営事務局)
通訳:田中恵美、チェ・ユジン

小川:今回の上映がこの作品の日本初上映となりましたが、どういうお気持ちでしょうか。大阪のお客様にメッセージをお願いします。


チャン・ヒョンユン(以下チャン):新型コロナウィルスが拡大している大変な時期に会場に観に来てくださり、ありがとうございます。
私の今までの作品は、どれも日本でご覧いただくことができたのですが、この作品は韓国では2018年釜山国際映画祭で初公開された作品です。正式な劇場公開は昨年(2019年)9月にされました。今回の上映が日本初上映ということで、大変うれしいです。


質問1:この映画を作るにあたって、何か影響を受けた作品というのはありますか?




チャン:基本的にジブリの作品が好きで、そういったものを作りたいと思ってアニメーションを始めたので、今回もジブリっぽいものを作りたいと思っていたのですが、予算そのものの規模があまり大きくないので、自分ではよくできたと思えないところもあります。


小川:予算的にということは、これはインディペンデントで作られたということなんでしょうか?


チャン:はい、その通りです。


小川:ご自身で予算を集められて、スタッフを雇ってという感じですか?


チャン:これは私のスタジオでというより、韓国映画アカデミーという学校があるのですが、そこから予算の資金の援助を受けて制作したプロジェクトで、だいたい制作費が全体で7億ウォン、日本円でだいたい7千万円ぐらいです。


質問2:声優さんはオーディションで選ばれたのか、それとも監督さんから、ぜひこの方にやっていただきたいというオファーをされたのでしょうか?


チャン:声優はオーディションではなくて、こちらからオファーをしました。ヒロインの役を演じたチョン・ウヒさんという方は、韓国のドラマなどでも大変有名な女優さんなのですが、この人にやってほしいという気持ちがあったのですが、有名な方なのでやってくださらないと思っていました。しかし、ご自身もアニメーションの仕事をやりたいという希望がありまして、それで引き受けてくださることになりました。

男性のシム・ヒソプさんという方は、実は個人的に親しい俳優さんでして、最初は小さい役で手伝いをしてほしいと依頼したのですが、演じてもらったら非常に雰囲気が良くて、主役の男性の役をぜひ演じてほしいということになり、配役が変わりました。

ロビーというギター役の俳優キム・イルさんは、ドラマなどで悪役やコミカルな役を数多く演じている俳優さんです。オファーをすると、自分はアニメーションで声優をしたことがないから、オファーの相手を間違ったのではないかと、聞き返されました。私たちがキャスティングを決める時、他のスタッフと一緒に綿密に話し合うのですが、アニメーションの映像を流しながら、その人達がドラマで演技している声を一回、音を流して当ててみて、確認を取りながら慎重に決めていったということをキムさんに伝えました。キムさんは実際にキャラクターを演じる時、とても楽しんで演じていらっしゃったので、私たちも見ていて、とても気持ちが良かったです。

他の方は俳優と兼任の方が多いのですが、アンドリューを演じた声優さんは、実はプロの声優さんで、作品を制作する際に、何回か録音をするのですが、一次ガイドといって、先に録音をしておくプロセスがあるのですが、その時からずっと参加していただいている声優さんです。このアンドリューというキャラクターというのが、私が思うに、専門の声優さんでないと難しいのではないかと思うような、声のトーンや役柄をイメージしていましたので、一次ガイドをやってもらった声優さんに最後まで演じてもらうことになりました。
他の脇役では、声優さんと俳優さんが何人か混ざり合って、混成のチームで演技をしています。


質問3:前の作品では彼氏がミュージシャンで、今回の作品では主人公の女の子がミュージシャンで、音楽と悪い魔法が戦って音楽の方が勝つと言うメッセージが込められているようですが、監督には音楽に対するこだわりみたいなものがあるのでしょうか?


チャン:おっしゃる通りです。私も作品をつくりながら、どうしていつも音楽をやっている人を主人公にしてしまうんだろう?と考えたことがあります。

私にとって音楽というものはどういうものなのか、どんな感じを与えてくれるものなのかと考えたことがあるのですが、音楽とは人の感情を動かす純粋な存在であるということ、また、人と何かを共有できる力を持っている、そんな存在なのではないか、そういう魔力がある存在なのではないかと思いました。

例えば、他の芸術的要素で、主人公が文学をやっている人間だとしたら、私はもちろん文学も好きなんですが、絵として表現しにくい要素だと思うんですよね。文学が持つ力というのは。そういったことを考えたとき、文学であれ、音楽であれ、芸術というものが持っている他人を愛する力、他人と共感し合う力、過去を振り返らせることができる力を持っているようなもの、いわゆる愛に関わる何かを表現してくれるものだと思ったのです。

例えば主人公が建築家でデザイナーとしての力を使って、悪の力と戦うという作品をつくると想定すると、映像がもっと他の感じになっていくと思うんですね。デザインの力で悪と戦うとなると論理的な力になるでしょうし、それは表現が難しいのではないかと思います。音楽は、実際に音楽を作っていくのは大変だという印象がありますし、またミュージシャンとして暮らしていくことも大変困難だという印象があります。

ただ、これは非常にアイロニカルなことなんですが、実際に音楽を表現する作品をいくつか作ってみて、正直、これはもうやらないなと思いました。なぜかというと、表現が非常に象徴的な表現ばかりになってしまって、これではちょっと良くないなと思ったからです。ですので、次の作品では、例えば、こういう武器を使ったので、相手をやっつけることができた、というような論理的な語り口で作品を作っていこうと思っています。

チャン・ヒョンユン
韓国外国語大学卒。韓国映画アカデミーでアニメーションを学ぶ。スタジオ「今じゃなきゃダメ」を設立し、短編『ウルフ・ダディ』(2005)、『わたしのコーヒーサムライ ~自販機的な彼氏』(2007)などで名を馳せた後、長編『ウリビョル1号とまだら牛』(2014)、『魔王の娘、イリシャ』(2018)を発表する。2018年にKIAFA会長に就任。

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