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『魔王の娘、イリシャ』レビューbyコスモG

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『魔王の娘、イリシャ』
마왕의 딸 이리샤/Ireesha, The daughter of elf-king
チャン・ヒョンユン 장형윤 CHANG Hyung-yun
2018 / 1:23:00 / 2D, 3D / Korea
魔法により記憶を失い、平凡な高校生として生きてきたイリシャ。友人ジンソクの失われた魂を取り戻すため、妖精界へと冒険に旅立つ。そこで謎のカエルとギターの妖精ロビーに出会い、ニセの魔王によって妖精界が危機に陥っていると知るが……。

『ウリビョル1号とまだら牛』のチャン・ヒョンユン監督による2作目の劇場用長編作品。独特のキャラクター造形によるファンタジックな世界観と印象的な音楽にのって、深い思索のメッセージが届けられる。
声の出演は、ドラマ『メロが体質』のチョン・ウヒとドラマ『パンドラ 小さな神の子供たち』のシム・ヒソプ。ドラマや映画で存在感ある演技を見せる二人が、イリシャとカエルを演じる。

 2019年10月に韓国で公開された劇場用アニメ『魔王の娘、イリシャ』を、ようやく観ることができました。公開当時はスケジュールがあわず韓国現地で観ることができませんでしたが、今年(2020)の2月にDVDがリリースされたと知り、迷わず購入。近年の韓国アニメ映画の公開後リリースはVOD配信が中心となっており、必ずしも全作品がDVDが発売されるわけではないので、こうして発売されると大変助かります。

 韓国の商業アニメは現在、大きく分けて3つの柱があります。1つ目は『ハローカーボット』や『メカード』シリーズ、『シークレットジュジュ』等に代表される児童向け作品。2つ目は全年齢向けの劇場用アニメ。3つ目は10代~大人のアニメファンが好む作風の、ウェブ漫画やゲームを原作としたOVAや配信アニメ(『エルソード』や『ある朝目覚めたら童顔Gカップ女になっていた』等)。『魔王の娘、イリシャ』はその2つ目の柱、劇場用アニメです。

 韓国アニメは、かつては日本のアニメ人気に押され気味でしたが、今では作品数や作風のバリエーションも増え、作品ごとのクオリティも一段と上がり、作品によっては国内のインターネット検索でもトレンドに上がるほど。玩具メーカーとのタイアップや海外輸出も盛んに行われ、日本アニメや中国アニメに続き人気を博している状態です。アニメとは、今では日本の専売特許ではなくなっているといえます。

 さて、『魔王の娘、イリシャ』です。本作は、2014年に公開された韓国アニメ『ウリビョル1号とまだら牛』のチャン・ヒョンユン監督の作品。前作が素晴らしい作品になっていたので、今回も当然期待値は上がっていました。

 本作の主人公は、日々の生活と家族と友情と恋に悩む女子高生のイ・リシャ。学園が舞台で高校生が主役のアニメというと、日本アニメに多いジャンルです。高校生が主役の韓国アニメというと、『クローバー3/4』(2000年)や『スーパーハムズバンド』(2009年)、WEB漫画『家庭菜園部事件日誌』のPVアニメ(2020年)等と、本数は割と少なめ。そんな中でも本作は、今の日本アニメ界隈で作品数の多い高校生主役の異世界冒険ファンタジー。韓国アニメの動向の変化を感じます。

 友人ジンソクの交通事故に責任を感じるイ・リシャは、彼の魂が魔王に奪われる様を見てしまい、その魂を追って妖精界へと突入。なぜか味方になってくれるカエルから自身が妖精界の先代魔王の娘であることを聞き、魔王の城に眠っていたギターの妖精ロビーも仲間に加わり、自身にかけられた呪いを解く旅を続けます。この呪いというのが、本作の一番のテーマになります。

 そういえば、ギター妖精ロビーが何故都合よく妖精界にいたのか、実はしばらく腑に落ちませんでした。また作中でも一部、彼の的外れな発言が物語をかき回しますが、しかし注意深く観ていると、実はこのロビーが非常に重要な存在であることに気付きます。ディズニー映画『アナと雪の女王』のオラフに少し近い存在意義を持っていますが、オラフよりもその演出はしっかりしており、キャラクターの重要度は高いです。

 それと本作で個人的にもう一つテンションが上がったのが、これも韓国アニメ史においてはそこまで数多くないメイド服キャラクター、チェ・ミソの登場です。しかも、下半身が蜘蛛の足になっているモンスター娘。見た目も言動も結構衝撃的なキャラクターですが、イリシャに対する彼女の対応を観ていると、彼女のような友達が間違いなく欲しくなります。

 一方、映像面ではメインキャラクターは手描きアニメの手法で描かれ、背景のモブキャラクターはセルルックのCGで表現されています。制作スケジュール等の都合によるものなのか、最初から表現技法として狙っていたものだったのかはわかりませんが、このモブキャラのCGがどうにもなじみが良くない。手描きキャラと比べると動きの質感の差が歴然であったり、表情も動作も硬かったりと、CGアニメはやり慣れているはずの韓国アニメとしてはやや外れ気味。アニメって、モブキャラが意外な所で人気を博す場合があるので、モブキャラもメインキャラ並に手を加えてほしかったというのが正直な感想です。でもそういう、ちょっと外れに感じる箇所があるのも海外アニメの楽しいところだったりします。

 日本アニメに比べると画的なカタルシスは控えめですが、作中やキャラクターへのテーマの隠し方が見事な作品です。去年劇場で観れなかった作品が、いよいよ劇場で、しかも日本で字幕付きで観れる機会です。尚、韓国の劇場ではエンディングのスタッフロールが始まると割とすぐみんな帰りだすのですが、みなさんは是非ともエンディングの歌が終わるまで観てください。『ウリビョル1号とまだら牛』と同様、チャン・ヒョンユン監督はエンディングの歌までが本編です。

『魔王の娘、イリシャ』ミュージックビデオver

『魔王の娘、イリシャ』予告編

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