花コリ2018名古屋会場ゲストのカン・ヒジン監督のトークイベントで流す、監督の過去作品『お婆の海』と『お守りの意味』の字幕翻訳を愛知淑徳大学の字幕制作チームにお願いしたご縁で、今年は 同大学「映像翻訳」の講義で学んだ知識と経験を活かしていただき、 韓国短編プログラム2を丸々、同大学の字幕制作チーム (字幕翻訳同好会) の学生さんに翻訳協力していただきました。
*2018年の字幕翻訳の、同大学の授業の様子についてはこちら。
この作品は前半と後半でお2人の学生さんが担当しています。担当された学生さんたちに翻訳された際のお話や作品の見どころについてお聞きしました。

『マスコット / Mascot 』
キム・リハ 김리하 / 2019 / 06:50 / 3D
自治体のマスコットを目指すキツネは、マスコット専門学校に通う。彼は狭い部屋に暮らし、多くのアルバイトを掛け持ちする。借金をし、整形手術までして、それでもオーディションを受け続ける。
感想
前半担当:伊藤萌梨さん
翻訳をしながらも辛くなってしまうストーリーでした。主人公は有名なマスコットになるために努力をしますが、それが報われない生活が当たり前かのように、感情的ではなく淡々と進んでいくところが印象的でした。特に最後の静まり返る部分は、緊張感があると同時に、主人公はあの瞬間どんな感情を抱いたのか気になる場面でもありました。
この作品は、動物たちが生活する非現実的なストーリーですが、アイドルを目指す人々の生活を見ているかのような現実感がありました。また、アイドルに限らず、将来を考える時期にいる人々が共感できる内容ではないかと思いました。現在の10代から20代くらいの人々は、日本では「さとり世代」、韓国では「N放世代」と呼ばれているそうです。どちらも自分の将来への不安や諦めをもつ世代だそうですが、そのような漠然とした不安が漂う世界観が作品の中にあり、その世代の苦悩を考えさせられました。
後半担当:高木万愉さん
今回作品を翻訳するにあたって、作家の方が映像を通して伝えたかったことはなんだろうかということを1番に考えながら訳しました。
韓国語で伝えたいことの雰囲気や言葉を掴みながら、日本の方々に分かりやすく伝わるような日本語訳を考えてみました。しかし、それが意外と難しく、ただ単に直訳するだけでは分かりやすい字幕は作れないのだと改めて実感しました。さらに、韓国特有の建物の名称など日本語に訳すことが出来ないものもどう訳したら良いのか悩みました。
字幕は短い文章の中に伝えたいメッセージを込めなくてはならず、韓国語の能力だけでなく日本語力も必要となってきます。字幕制作は思っている以上に大変な仕事だと感じました。
今回訳した作品は、マスコットの世界の話ですが、実際に韓国社会を表した作品になっています。社会の生きづらさを表していたり、自分らしさってなんだろうかということを考えさせられたりする作品だと思います。
花コリ2020名古屋会場では、 愛知淑徳大学字幕制作チームをゲストに、生トーク 「大学生が見て、訳して、感じたアニメーション」が開催されました。
*トーク録はこちら。